Atomic Heart

Atomic Heart

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ストーリーもゲームプレイも、バイオショックっぽさを全然隠してこない感じで潔かった。でもバイオショックみたいなゲームはいくらでもやりたいから全然うれしい。終盤にはあからさまなラプチャーのオマージュもあった。
50/60年代で科学技術だけが異様に発達したが倫理観はめちゃくちゃという設定だけでなくて、主人公が実は何者かに操られていて、信頼する仲間が黒幕かもしれない、みたいなところまで一緒だとは思わなかった。
ストーリーとしては、終盤チャールズがにわかに怪しくなるところではわくわくはしたけど、そもそもバイオショックっぽいって聞いてたのもあるしもはやそこまでの驚きではなかった。どちらかというと、ロボットの奇妙なデザインや動き、カットシーンでの演出の方が抜きんでて面白かった。
メールログや会話など、ほぼすべての文章にB級ハリウッド映画のようなアメリカンジョークが自覚的に挟まれていて、流石に勘弁してくれ!となってしまうようなときもあったけど、総じてストーリーも楽しかった。
まあストーリーは本当に本編終了したくらいでちょうど中間地点に入ったかのような展開で、DLCがあと4つあるのも納得という感じがある。なんていうか、ザカロフかサチノフかフィラトヴァか、はたまたジーナ婆さんかエカテリーナか、いったい誰が黒幕なのか、というところでラスボス戦に入っていって、はいザカロフでした!となってエンディングだから、下手したら中盤にすら入っていないのかもしれない。

ゲーム序盤からヴァヴィロフを脱出するまでの間は、操作方法の理解も曖昧だったし割とわからないままわちゃわちゃやってる感あった。
操作方法に関しては自分が察し悪いところもあるけど、ちょっとだけ表示されるチュートリアルを見逃すともう見返す手段がなくて、ボタン割り当てすらわからないのは結構辛かった。あとFPSのジャンプアクションも一生馴れない気がする。どうやったら一人称視点で「今ちょうど足場の端っこに立ってる」ってわかるようになるんだ?
ボイラーを冷却するところで主人公が「こんなもの誰が考えた!?玉詰めはもうウンザリだ!」と言うのは、本当にお前が言うなよと思ってしまった。

ヴァヴィロフから出てVDHNに潜入するまでに通る3826番施設はオープンワールド風のマップになっていて、ゲームの終盤で通る場所までこの時点で行けるようになっている。ただ、この時点では自分は後からまたここに来ることがあるのかどうかわかっていないくて、今の段階でアイテム回収しなくちゃいけないのかと勘違いしてた。こういうゲームに慣れてたら、「あーこれは絶対に後からまた来るところだな」って直感的に察せられたりするんだろうか。
それと3826番施設内は基本的に監視カメラから隠れて通らなくてはいけないのもちょっと窮屈だった。ステルスに役立つスキルがあまりなく、もし見つかったときも敵を一掃するか逃げるかしかない。せっかく広いマップに出たのに端っこをずっとこそこそ進んでいるか、目的地までわき目もふらず一目散に走っている時間が多かった。ステルス要素があるゲーム全部 Dishonored のブリンクを標準搭載してほしい。

実際VDHNをクリアするまでは正直このゲームのことをあまり信じていなかった。なれないFPSをやりながらつまんないジョーク(おそらくライターも自覚的につまんなくしてると思う)を聞かされて終わるだけなんじゃないかと思ってしまったりもした。でもこのVDHNのシーケンスをクリアしたときに、主人公の意識がリンボーの世界に転送されてファンタジーの世界で謎のジャンプアクションステージがはじまったり、ロボットの双子の暗黒舞踏が始まったりして、このゲームをやれてよかったと思えた。

戦闘もVDHNを抜けるころにはスキルもだいぶ強くなってそこそこ楽に進められるようになってきた。一応武器もスキルも作成や強化にかかる素材はペナルティなしで戻ってくるし、いくらでも振りなおしできるんだけど、結局ずっと同じスキルと武器で最後までいってしまった。ある程度強化すればどんなビルドでも大丈夫になっているのは良くバランス調整されていることでもあるけど、なんとなくずっと同じ戦法でごり押しで戦っている気持ちだった。自分の場合はフロストバイトで敵を凍らせて近接武器で殴るというあまり賢くない戦法しか取っていなかったから、よりそういう印象を受けたのかもしれない。

こういうスキルツリーを育てていく要素のあるアクションゲームって好きな戦法を試せるようになるまで時間がかかるし、ちょうど色々試せるようになってきたときには自分の中で強い戦法が確立されてしまったり、そもそもストーリーが終わってしまうことがあるけど、そういうのを解決するためのオープンワールド風のマップなのかもしれない。ただ、マップを再探索して試験場を回るのも面白かったけど、やっぱりもう戦法が固定化されていたのもあって探索で得た報酬にあまりありがたみを感じなかった。ただ実績のために全部周っていた。

演出的には劇場が一番好きだった。特にペトロフの死亡シーンが良かった。あんな風にすごい疾走感があるなかでスッと死ぬ人をこれまで見たことが無い。ペトロフは完全にモブ顔なのにあれのおかげで圧倒的な存在感がある。まじでどうやって死ぬの?と思ってずっと釘付けになって見ていたら、どこから出てきたか分からない、キモいピエロの張りぼてに装備されていたナイフでサクッといったから、なんかめちゃくちゃ笑ってしまった。音楽やカメラワークの疾走感もあって、主人公の理解が追い付かないまま物事がどんどん悪い方向に進んでしまっている様が象徴的に表現されていて、そういう主人公の立場に感覚的に同調できた気がした。主人公がこの状況で笑ってしまわなかったのはえらいと思う。いや、実際目の前で見たらビビっちゃって笑えないか。

ところで終盤のボスはほとんど左手で回復して右手でレールガンを撃ちまくって倒していた。もうここまでくると回復薬やアドレナリンカプセル、発電機が大量にあるから負ける方が難しくなっていた。

  • 「死んだ花屋」が大体やばいやつなのは何か元ネタがありそうな気がする。そういうのにプレイ中に気づいたらかっこいいような感じもあるよね。
  • そういえばロシア的倒置法(ソビエトロシアでは〇〇が××する)の典型的ジョークがなかった気がする。もう寒すぎてだれも言ってないんだろうか。ロシアだけに。このゲームのノリなら出てきても全然違和感なかった気がする。