Cibele
単なるネトゲで知り合った男女の恋愛話で、青年期のどこか青臭くてちょっと痛々しいよくある話にも見える。一方、不安定な少女がどこか胡散臭い年長の男性にいいように操られているような雰囲気もある。ただ、Blake もあからさまに嘘をついているようには見えないし、人と親密な関係になるのを恐れているというのも納得感はある。
まあ、何なんだよという終わり方ではあるけど。
単なる男女の恋愛と思うかそうでないか、そうでないとしたらそれはなぜなのか。その理由にネトゲをはじめとした2000年代のインターネットコミュニティの在り方や、Nina のオタク趣味が影響していたと思うのか、そして、影響しているように見えるとしたらどういう偏見が鑑賞者にそうさせたのか、など割と実験的な作品なんだろうなという気がした。
断片的なテキストしか存在せず想像の余地がだいぶ広い作品ではあるけど、チャットログやブログのアーカイブなど独白という形で Nina の心理描写がいくらか書かれているし、1990年あたりに生まれた人間ならどこか「あー……」と思うような作品名やネットのノリに、同世代の人間なら「これって自分の問題なのかも」と思わせるくらいの説得力はある。
同時代的な感覚と言いようのない不安を言葉足らずに表現する感じや、終始自然光だけで暗い画面だったり、ちょっとした濡れ場があったり、最後よくわかんないけど悲劇的な感じで終わるのとか、なんかインディーズって感じがする。実際なんの前提知識もなく「インディーズゲーム」って聞いたら普通こういうのを想像すると思うんだけど、現実のインディーズゲームはめちゃくちゃよくできてるからちょっと混乱する。
いろいろと想像の余地を残している体はしているけど、画面が常に薄蔵かったりBGMもどことなく不気味だったりと恣意的に不穏な感じを出している気がしないでもない。自分が不穏な感じを過剰に見出してしまったのは、ちょうど同じタイミングで「ザ・ガールズ」を読んでいたからかもしれないけど。
- Blake も初セックスうまくいかなくてテンション下がっちゃって「あーもう全部無理」ってなっただけかもしれない。だとしても虚勢の張り方が変すぎるけど正直ちょっと気持ちがわかるかもしれない。
- あと Merriweather Post Pavilion が 2009 年って聞いて自分もなんかもう無理になってしまった。なんもなってないじゃんこの〇〇年間。