Ctrl Alt Ego
個人的には Immersive-sim と呼ばれるゲームをやるときに一番興奮するところは大失敗したり計画通りいかなかったときにどう対処するかというところにある気がする。
じゃあどうやってプレイヤーに「これならギリギリリカバリーできるかも」と思わせる大失敗を、スクリプトされたイベント等を使わずに引き起こすのは難問だけど、そういうのを様々な方法でやろうとしていたゲームな気がする。
微妙に不安定な操作感やいたるところに隠されている Bug Trap も、一見理不尽だけどある程度馴れたプレイヤーに対してもそういう「失敗」を体験してもらうための要素かもしれない。
逆にリカバリーできるかも感を煽っている要素で言うと、このゲームの一番特徴的な、自分が操作するロボットが破壊された後も他のロボットに憑依すれば継続できることが挙げられるかもしれない(他にも Printer のような蘇生装置とか、こういうのは System Shock とかでもあったけど)。
作者のインタビューでも iron man stealth
でプレイするのが好きだと言っている通り、正面からまともに戦ったら勝てないけど、もし見つかってしまっても何とかする方法が多かったと思う。地味なところだと Printer を使った spamming も戦略として認められているような記述もゲーム中にあってうれしかった。
自分のプレイでも、序盤はショットガンの Juice 消費量の多さにビビって敵との交戦を避けるのが最優先だった。ただ、大体のゲームだと序盤のステルス要素は、スキルが少なかったり攻撃力が低かったり、消極的な選択というか嫌々やらされていると感じることが多いけど、このゲームだと Ego を使った敵対キャラクターのコントロールが最初から解禁されているおかげで、割とのびのびとやれている感覚があった。
敵対キャラクターのコントロールはスキルとしては珍しくないが、自分がやった他のゲームだと特殊な方というか一切使わなくてもクリアできるような立ち位置だったりして、正直初見プレイで自分から使おうとはしてこなかった。こういう少し特殊なスキルや戦略を使わせようとする仕組みがゲームを通じて巧みだったと思う(まあ結構強引な誘導かもしれないけど)。
チャプター 0 からプレイヤーキャラクターはまともな攻撃方法を持っておらず、 Pup での偵察や Dad でのシリアライズなど、特殊な戦略のチュートリアルになっている。自分はゲームに慣れない間はこういう戦略を避けてしまいがちなんだけど、丁寧にハードルを下げてくれたというか、逆にこういう方法で進めるゲームなんだと思わせてくれた。
チャプター 3 で新しい敵対キャラクターの Mum が初登場したときも、最初に Mum を操って進むような小タスクが設定されていたり。
Ego によるコントロール自体、単なる戦闘回避だけの目的じゃなくて対象によって操作感からガラッと変わるのも単純に楽しかった。
そもそもチャプター 7 の Conscious Robots が始まるまでは、 Ego を使って他のロボットをコントロールするだけでほぼ戦闘を回避できちゃうし、本格的にステルスするか戦闘するかを迫られるのはこのチャプターが始まって、Ego でコントロールできない敵対 Bug が登場するあたりかもしれない。
このチャプターから Dr. Everyman の生前の足跡が少しずつ分かっていったりストーリー的にも本番が始まった感があり、実質 0 - 6 まで 7 章かけて丁寧なチュートリアルをやっていたのかもしれない。あるいは1周目が全部チュートリアルなのかもしれない。
なんかごちゃごちゃ言ってるけど Deus Ex シリーズ1作品もやったことないままではいけない気がしてきた。
- 上のインタビューでも語られてるけど、そもそも大規模スタジオ(Arcane って中規模くらい?)も開発を諦めちゃった Immersive-sim を個人で作ったってだけでそうとうやばいのに、ちゃんと面白いしすごい良くできてるのは奇蹟レベルだと思う。
- Mum にしっかり尻たぶがあるのに気づいたときはふざけるなよと思ってしまった。