Deadeye Deepfake Simulacrum
有名なバーテンダーのアニメキャラって誰だったんだろう

まだアーリーアクセスだけど、スキルやパークが楽しくバランス調整されていて、初見でも強いところと弱いところがわかりやすい。プレイスタイルによらず好き勝手しようとすればやれるけど、常にリスクが付きまとう。リスクを減らそうとすると動きが制限される。この塩梅がちょうどよく、スキルの構成に頭をひねりながら、一周クリアするころには自分に合った構成を見つけて割と好き放題にプレイできるようになった。
この種のゲームで、スキルやPerkをポイントを消費して開放するとき、初見では何を選べばよいのかわからないという問題がついて回る。持っているスキルに応じて、どうクリアするかを組み立てるのが面白いところではあるが、逆に言えば行動が制限されてしまうので、どのスキルが自分に合っているか判断できないのは割とストレスになる。ジャンル知識によって、名前や説明文から推測できることもあるが、それはつまり、あまり新規性のないスキルだともいえる。
『Dishonored』や『Ctrl Alt Ego』は、スキルの使いやすさやどのようなプレイヤーに向いているかを、スキルの説明文に具体的に記述することでこの問題に対応している。また、極めてチャレンジングだが、追加のアイテムやスキルなしでもクリアできる調整がされてはいる。『Dishonored: Death of the Outsider』は、スキルポイントを撤廃し、追加スキルは、装備アイテムとしてゲーム中の決まった地点でしか入手できず、プレイヤーの選択の余地をほぼなくしている。『Mosa Lina』はプレイヤーにスキルを選ばせずランダムにピックして「嫌だったらリセットしてね」としてしまっている。無茶苦茶だが、1ステージが極めて短いおかげで機能している。
このゲームは、ステルス、ハッキング、近接、などプレイスタイルごとにスキルのセットが用意されている。プレイヤーはポイントを消費して、特定のプレイスタイルに応じたスキルセットを一気に全部開放することができる。プレイヤーのジャンル知識によってはいるが、初見でどういうスキルかわからない問題は、プレイスタイルの名称と説明から察することができる。そして、スキルセットのなかに「これどうやって使うの?」みたいなものを紛れ込ませることで、他ゲームにない新規性を持ったスキルとプレイヤーが出会う機会も残している。さらに、複数のプレイスタイルのスキルを組み合わせることで開発者も想定していなかったシナジーが発生するかもという可能性に期待もできる。
つまり、プレイスタイルから一気に大量のスキルをアンロックできるこのゲームのスキルシステムは、自分にとっての正解にだいぶ近い気がした。ただ、スキルはすべてデメリットも大きく、別のプレイスタイルと合わせてシナジーを発見するのは難しく、結局ほぼハッキングのみに落ち着いてしまった。
ハッキングメインで進めた一周目で言うと、壁越しのデバイスにも侵入できる Perk の Out of Bounds とハッキングしたオブジェクトにワープできるスキル I'm In で好き放題できるぞと思ったら、Out of Bounds のデメリットでラップトップの開閉音が大きくなり、ワープした後即敵に検知され襲撃されたり。このワープ後のリスクを減らそうとしてステルス系のスキルを入れようとしたら、 Data Scraper や Portable Backdoor など侵入を容易にするスキルを入れる枠が足りず、微妙に動きづらくなったり。
スキルは全体的に尖ってて好き放題できる可能性がある一方、こういう歯がゆさが常にあり、Data(ハッキング用のトークンのようなもの)が足りなくなる、防衛システムからの処罰を受ける、など、リスクを受け入れる判断をするしかないのが、こう、良いなって感じがした。こう書くと何が良いのかわかんないけど、なんか良いんすよ。
リスクの話で言うと、敵対コンピューターに侵入する度に防衛システムから確率でペナルティを受けるのは運ゲーな気もしたし、無理やり緊張感が残るようにゲーム側に強制されているという見方もできるけど、実際それくらいないとハッキングがノーリスクすぎるかも、と最終的には思うようになった。防衛システムのペナルティから隠れるスキル( Portable Backdoor や Spoof )もあるので嫌な人はそれを使っていこうという意図もわかる。でも、tollbooth だけは対策しようがないしちょっとやばい要素な気がした。
レベルデザインにもこだわりがありそう。特徴的に感じたのはどのレベルでも巡回している敵対NPCがほぼいないところだった。これのおかげで、ステルスプレイをしているとよくある、ゆっくり歩いて巡回する敵の後ろを尾行したり、扉や角を曲がるタイミングを隠れて待ったり、などの行動をする必要がなかった。こういう行動は自ら積極的に動いていると感じられず、自分はあまり楽しさを感じることがなかったので、このゲームと馬が合うと感じた要素の一つかもしれない。
ストーリーは、面白い設定はいくつかあるけど、プレイヤーが体験する視点からは別にどうでもいいことばかりで、関係ないフィクションの裏設定をずっと聞いているような気分だった。その上、常に主人公の視点からしか話は進まず、グラフィックも最小限の表現しかしていないのもあって訪れる場所も大体同じ雰囲気で、ゲーム中に見聞きすること以外の世界を想像するのが難しかった。それもある意味、個人にはコントロールできなくなった巨大企業同士の抗争に余儀なく巻き込まれる世界の住人となった主人公の体感と一致しているといえばそうなのかもしれない。
The Concierge も裏の目的とかがあるわけではなく、ただ Handler としてより成果を上げられるようにしているだけの(主人公と同じような)ワーカホリックだった。最も驚きの少ない現実的な真実が常に横たわり、「何か起きるかもしれない」というプレイヤーの期待は裏切られ続ける。これはゲーム全体の雰囲気を強く決定づけている気がする。登場人物たちが準備していた計画が衝撃的な展開で崩壊するカタストロフィが訪れるような形での裏切りはなく、ただ何も起きないというゲームをしているプレイヤーにとって最も報われない結末を迎える。
主人公の敵役として The Concierge くらいがちょうどいいのかもしれないと思うと、自分が現実で常に飲み込んでいる絶望の大きさも、この程度かもしれないと思い出して、割としっかり嫌な気持ちになった。
こういう展開自体の好き嫌いはあるにせよ、プレイヤーを何らかのシミュレーションの被験者として捉え操作キャラクターとプレイヤーの境界を曖昧にしようという目的においては、「ストーリー上報われないのは登場人物ではなく、プレイヤー自身であるべき」という一貫した考え方に沿っている気がする。ジャンルに対する生真面目さというか原理主義的な一面があるのかもしれない。
- 借金100万ドルで日利1%なんて一見めちゃくちゃで返しようが無く見えるけど、1~2万ドルの簡単なランダムミッションが毎日あるので割とゲーム内時間でも半年もかからずに返済できてしまう。借金払ったらあっさり帰してくれるし(出口に地雷はしかけてくるけど)案外優良企業なのかもしれない。
- 細かい数字の目標にとらわれて、結局この仕事なんのためにやってるかわからなくなるのはDDSの世界の人間も同じなんだと思ったら元気が出てきた。キャリアのよくある悩みは会社名の長さが87テラバイトになっても同じなんだね。
- あと、ハッキング中のタイプ音が妙に気持ちよかった。個人的にはカチカチ鳴るキーよりスコスコって感じの音がする方が好きだけど。
- ゲームシステムやストーリー上サイドキックのふりをしているが、実際は自分の目標達成しか考えていないサイコパスのコントロールフリーク的立ち位置のキャラとして、最近遊んだゲームだと『プリンと盾琴』のシグナスを思い出した。The Concierge と比較してシグナスは良いキャラしてたなとか思ったけど何でだろうな。やっぱカシラ張ってるからかな。