Dig Night
ちょっと良すぎてわかんない

個人的な思想と合致しすぎて全然正当な評価ができず、なにをどう書いたらいいのか全然わからない。そもそも正当な評価なんてこれまでもする気あったのか?
第一印象悪くて話下手で、ぎりぎり社会の端っこにぶら下がってる友人が、そんな状態でも自分のことを気にかけて話しかけてくれているような、そんなゲームだった。
なので、まず序盤の印象から言うと、正直ろくなことが無い。
誰かの病的な妄想が現実を侵食する「肉体分裂症」なるものが当たり前のものになった世界。曖昧で不穏な見た目の(完全にチンポじゃん!ってのもいるけど)、妄想の具現化である「ゴースト」が夜の街を跋扈している。サイコロジカルホラーのベタみたいな設定だがパロディのような雰囲気もない。戦闘バランスもめちゃくちゃ。雑魚敵やボスも、なんの前触れもなく即死級の攻撃を打ってくる。属性による三すくみ要素もあるが、属性操作できるアイテムは序盤では金がなく満足に使えない。ゲーセンやバイトのどうでもいいミニゲームの繰り返しで金を稼ぐしかない。ダンジョン内の謎解きも本当に十年前のRPGツクール製のゲームからそのままやってきたような代物。
それでも、リカルドや深夜の町の住人たちの、息継ぎを感じるリアルなテンポのセリフにどうしようもなく人間を感じる。このゲームの魅力がそこに残っているような気がして縋るような思いでプレイし続けた。
3日目が終わるまではそんな印象だった。正直やってて悪い意味でずっと不安だった。
4日目になると、これまでのルーティンから外れ、レオナルドの肉体分裂症が悪化した影響で侵食された自分の家を探索する。ここでリカルドの正体やレオナルドが抱えていた問題についてはっきりと提示される。
正直、レオナルドが抱えていた具体的な問題についてはどうでも良かった。それよりも発生した症状との向き合い方が具体的で共感するところが多かった。そしてこの向き合い方を擬人化した存在が「リカルド」としてずっと描かれていたのかと、勝手に思い込んでいる。
3日目までの「病体」たちもそれぞれ家族、職場、プライベートで問題を抱えていて、レオナルドと共通する部分も多い。RPGのダンジョンとして表現された彼らの妄想に、リカルドあるいはプレイヤーは、渋い顔しながら無視せず向き合って、仕事だからと力ずくで病院へと連れていく。現実を否定して怒り続けるアリス、全てをあきらめ一人の世界にこもるジョン、神のような存在に救いを求めたクレマン。客観的にレオナルドの状況を見たようなリカルドはクレマンに対して共感するような笑みを見せる。
ノアに対して無責任にも悪態をつくリカルドは、こんな思いをしなくたって普通に生きていけてる人間がいくらでもいるのに、なんで自分だけ気を使ってなくちゃいけないのか、という自助のバカらしさに対する反動かもしれない。社会的な役割から逃れられないレオナルドではありえない行動だろう。
「無責任」な人格を作り出して自身の疾患や社会と向き合うという一見おかしいアプローチが、リカルドの奇妙な魅力によって不思議と有効な方法に見えてくる。こうしたアプローチに画一的な正解はないが、それぞれ合った手法があるはずと背中を押してくれているようだった。精神疾患をテーマにしたゲームで、快方イメージにまで触れているゲームは、自分の管見だけど珍しい気がする。こういうゲームがもっと増えたらうれしい。
色々とめどがついた後、朝の街並みを歩いているときの雰囲気が特に好きだった。ラスボスを倒して平和になった後の世界を歩いているみたいだけど、実際に変わったのは時刻だけ。これまで夜の姿しか見ずに勝手にさびれた街に見えていたプレイヤーに対して「いや、お前が勝手にくたびれてただけで、全然みんな息してたんだよ」と言われているようだった。
はっきり言われたらイラっとすることを、暗示的に、かつちょっとのユーモアを添えて指摘してくれている感じ。自分には過ぎた友達に気にかけてもらって、背筋が伸びる思いだった。
- もっと書きたいことがある気もするけど、まだあまり考えがまとまってない。後から書き足すかも。