はにま通信 (1巻)
ハイン君!!君の仕事はなんですか?
漫研のダサ坊、安永について考えずにはいられない。ていうか、『奈良へ』のハインをめちゃくちゃ思い出した。『奈良へ』の解説では、ハインには作者の魂が憑いているとまで言われていたけど、それに比べると安永は多少距離を感じるというか、「キャラクター」になっている気がした。
安永がヤンキーに絡まれたときや、宇仁に恋愛のアドバイスを求めたときに見せた奇妙な明け透けさは、フィクションとしてのエンタメ要素なのか。現実ではロクに語られることなどない安永のような人物が、唯一輝ける場所があるなら、あるいは、ただ存在した証拠だけでも残るのは、フィクションの世界だけなのかもしれない。
ところで、安永が宇仁から受けたアドバイス「てか告白の前に友達になるところからやろ」は、海外の自閉傾向を持つ当事者向けの人間関係のハウツー本に、似た内容が書かれていたような覚えがある(統計的に、友達が多い人間の方が恋愛・結婚へ発展する確率が高い、みたいな)。都市では障害や病気だとされるものが、まだ人間らしさだと扱われている現実もある。この対立がギリギリ残っている最後の時代を生きている気がして、勝手にこの漫画に同時代性を感じている。
『奈良へ』は、もう奈良に骨を埋めるしかない人間たちの話だったけど、はにまや凪など、比較的未来がありそうに見える高校生の視点から進むのが逆に不穏かも。
- 「MIND」と書かれたキャップを被った、古墳に何かを撒いている、全然質問に答えないおっさんや、駅の待合室で、見ず知らずの女子高生に急に恋愛についてのアドバイスをしてくるおっさんなど。
- 破天荒な同級生、宇仁が友人と話すために漫研の部室に入るとき、一瞬だけ借りてきた猫のような態度になるところとか、まだあまり触れられたことのない「あるある」みたいなものが描かれているのも結構好き。