L.A. Noire
やっぱり Phelps の表情が面白い。事件解決時のニコニコ顔とか、犯人を射殺したときの笑っちゃうくらい渋い顔とか、もはや好きにならざるを得ないような魅力がある。
外面と自分の出世のことしか考えていないヒラメ野郎の警官が主人公というと全く魅力的に見えないけど、そういう Phelps の側面が見えてくる頃にはもうだいぶこのキャラクターに親近感が湧いてきてしまっているのが面白かった。
物語としてはだんだんと Phelps という男のあまり冴えない部分が明るみになっていくんだけど、それでもひたむきにLAPDとしての職務を全うしそれがLA市民の安全につながると信じる気持ちに裏はないんだろうなと思わせるような説得力が顔面から湧いてきていた。
ただ、後に不倫相手となる女性との会話で、phelps が額面通りの物言いをしたとき、あれはPhelps 自身が嘘を見抜かれたというか、本当に彼自身がやらなくてはいけないと思っていることは他にあることを自覚させられたきっかけになったのかもしれない。
Phelps は、推理は冴えているし最終的に事件を解決する能力は高いけど、常に誰かにはめられているようであまりどこかうまくいっていないように感じる。このなんとなくうまくいっていない感じは、証人がさっきしゃべっていたことも覚えられず梯子の上り下りもまともにできないプレイヤーとしては非常に共感できる。
実際、Homiside desk の事件はほぼ全部誤認逮捕だし。プレイヤーのこんな捜査で逮捕しちゃっていいの?という感覚が違和感なく回収されてる感じがある。
その中で Arson desk への降格につながる Phelps の不倫シーンは奇妙というか裏切られたような気持ちになるんだけど、あの場面があるからこそ、Pheps というキャラクターが推理ゲームの主人公(その場その場で良い警官にも悪い警官にもなる無個性な事件捜査マシーン)から解き放たれたような感じがある。
後半に出てくる Jack の方がいわゆるヒーロー然としているんだけど、もうこのころにはちょっと Jack を演じるのは荷が重くなっている。Phelps くらいの方が落ち着くというかこっぱずかしさが少ないみたいな思いがある。
何より Phelps が可哀想すぎるってこともないからさらに可哀想な感じがある。そこまで悪い奴では絶対にないんだけど、こいつは死んで当然だと思う人も世の中にはいるだろうなと容易に想像できるし、自分も「まあでも殺すほどでもないっしょ?いくつか良いことだってしてるし……」くらいの弁護しかできない。
あんま関係ないけど、最後に主人公が死ぬことでなんとなくきれいに終わったような気がするのって奇妙な感じがある。誰かの人生の一部を物語として切り取るとまるでここで死んでよかったかのように見えるのは結構怖いことかもしれないし、救いなのかもしれない。何の話だよ。
- いわゆるフィルムノワールと呼ばれる映画を一つも観たことなかったから、ランダム・ノワールで紹介されてた映画をランダムにいくつか観てみたい。案外ここまで昔の映画になるとあんま配信されてなくって。あと 「L.A. Confidential」 をだいぶ参考にしたらしいけどさすがに翻訳がない洋書を原文で読むのはきついかも、とか言ってたら一生読まなくなっちゃうから、気合い入れて読まないとダメなんだよな。
- ところで Phelps がめちゃくちゃ出世を急いでいた理由をまだあまりつかめていない。「そんなの想像できるでしょ?」って話なのかもしれないけど、なんか読み飛ばしてしまってるところがある気がする。
- 『リーガルダンジョン』でも思ったけど、自我の薄いプレイヤーキャラクターが光の列車に乗って突き進み、最後に報いを受けるというのが好きなのかもしれない。なんか身代わり人形みたいな感じで。