Lorelei and the Laser Eyes

人間の歯の数は32本

Lorelei and the Laser Eyes

Steam

赤の迷路、クイズクラブ、スーパーコンピューターなどの大きい謎解き(ヒントがその場になく、複数の資料を照合して推測する必要があるもの)を考えている間に、館を探索しながら細かい問題を解いていられるので、行き詰まりを感じにくく最後まで楽しく遊ぶことができた。
他にも、問題に数字が絡んでくる場合はほぼ特定のものしか出てこなかったり、謎解きごとに関係するシンボルが分離していたり、プレイヤーが推測する上で勘違いしてしまう要素を出来る限り排除するような気配りがたくさんあった。

それぞれの問題はそこまで難解ではないが、単純に「難度の高い問題を解いたぞ」という気持ち以外のところで、謎を解いたときの満足感がブーストされていた。それこそ奇術でも使われているような感覚すらあった。

おそらく、謎解きとゲームの世界観や物語が密接につながっていることに起因していたと思う。謎解きの答えだけでなく、使用されるシンボルやオブジェクトなどがすべて、Lorelei と Renzo の過去や妄想の内容を示唆しているので、謎解きに没頭することがすなわち物語への没入感を生むことにもなっていた。

謎解きと物語の関係が疎になっていると、「なぞなぞを解いたらご褒美に物語の続きが読めますよ」という、謎解き部分が作業になってしまうことがあるけど、このゲームはその真逆というか、その関係が非常に密になっているんだと思う。どうしたら密になるのかとかはわかんないんだけど。でも一つだけ言えるのは、これはそもそも謎解きと物語の両方とも面白くないと意味がないだろうから、実際にやるのはめちゃくちゃ大変だろうしすごくすごいゲームだと思った。

謎解き自体のバランスが非常によくできているから、パズルゲームなのに手動セーブだったり、ゲームオーバーが存在したりなどのアンチパターンがあっても許せるというか、単調にならないための効果的な演出になっていると思った。

最終的にトラウマを払拭するために必要だったのが Renzo からの言葉(実際に Renzo が言った言葉ではないだろうけど)だったのは、Lorelei の複雑な記憶のなかのどこかポジティブな部分が見れたように感じられてよかった。

事件をきっかけに様々な憶測を呼んで、好事家たちの間でおそらくカルト的な存在になっていた狂気のアーティスト Renzo に対する、直接かかわった人間にしかわからない人間的な側面(あるいは尊敬すべきアーティストとしての側面)を最後に思い出したように見えた。

これは、 Renzo を許したとかそういうこととは関係なく「Renzo に振り回され、一生残るトラウマを負わされた女性」の物語から Lorelei 自身がようやく離れられたことを表しているように思えた。

  • こういうのは実際ろくでもなかった昔の関係について思い出すときに、自分の過去を正当化しようとする防衛反応みたいなもんかもしれないけど、回復期にはそういうのも必要だとおもう。
  • 謎解きと物語の関係の密度の話だと、S.C. ボルトの謎解きはちょっと例外だけど。まああれは、引っかかった自分が悪いんだろうか。