Superliminal

賢(けん)

Superliminal

Steam

「光学」や「キュビズム」はパズルゲームというよりは美術館の展示のようで、落ち着いて探索できるウォーキングシミュレータみたいな感じだった。スムーズジャズまで流れてるし。最初のチュートリアルが結構パズルゲームだったうえに、視点を変えて物体の大きさや位置を変えるという斬新なギミックに対して、驚くとともに変に身構えてしまっていたところがあったが、急に高難易度の問題をぶつけられなくて安心した。
実験室の壁を抜け出してバックエリアに出るのは Portal のような不気味さを感じたが、不穏な雰囲気はあれどあそこまで敵意を感じるほどではないし気楽だった。
次の「停電」もそうだけど、あんまりマジにならずにちょっとからかわれている程度の雰囲気に終始しているのは割と好きだった。

その「停電」も、単純にホラーっぽい演出があるだけじゃなくって、暗い空間を光源をヒントに進んでいく仕掛けも面白かった。こういうギミックはほかのゲームにもあるかもしれないけど、視点を変えることで光源を大きくするのはこのゲーム独特のギミックを応用した感じで面白かった。
どうでもいいけど、普通にクリアするより先に犬エンドを見てしまった。でも、あれはほぼみんな白のポーンを追いかけてしまうんじゃないか?

「クローン」の巨大扇風機がある部屋のパズルで最初に詰まった。持ってるオブジェクトの大きさの変え方はなんとなく理解し始めていたけど、触ったオブジェクトがどの場所に配置されるかがその時点ではいまいちわかってなかった。というか最後まであまりわからなかったかもしれない。
でも、最初にドアを触ったときに増えたのは普通にウケてたし、最後までどう動いているのかは良くわからなかったけど面白かった。

「人形の家」が一番好きだった。ミニチュアを拡大して眺めるようなのが好きだからこういうのに無条件に反応して快楽を得る脳の部分がある。
中でも家の中にある小さいドアに入るパズルが一番印象的で、通常サイズの視点だとテーブルの上にある小さいドアまで上る足場が全く見えてなかったけど、小さくなった視点だと一目で横のケースから上ることができるのが分かるようになっている。「視点を変える」っていうコンセプトでこういう発想のパズルも出てくるのにすごく感心していた。

「迷路」は一番混乱したし、ここも正直あまり理解できなかった。あまり統一感はなく、こっちこそ本当のホラーゲームみたいにサプライズ演出が連続して出てくるという感じだった。
しかも、最初に向いた方が行き止まりになる無限分岐路のパズルでしっかり詰まったし、音楽も緊張感があって結構厳しい印象だった。
次のアヒルのプールのパズルも、最初に足場にしたサイコロを段差の上から拾って再利用しようとしたらなぜかさらに上の足場に移動していたり、なんか、自分の精神状態によっては我慢できなかったかもしれない。こう、開発者に、アメリカのいいとこの大学生連中にからかわれてる感じがして、カーネギーメロン大学って、なんだよエンターテインメントテクノロジーセンターって。こんなこと考えないようにしようって決めたばっかりなのにね。お前はとりあえず目の前のことをちゃんとやれ。
ところで、開発者コメンタリーによると、様々なサプライズ演出のアイデアを一か所にまとめたボスステージという想定で開発したらしいので、ある意味狙い通りなのかもしれない。

「迷路」がボスステージなら次の「空白」はエピローグなのかと思っていたけど全然そんなことはなくしっかりパズルがあったし、なんなら一番難しかった。でも雰囲気はずっとエンディングっぽい感じなのがなんか面白かった。
キューブを白い扉の向こうに置いたときだけプレイヤーも通れるようになるパズルは相当詰まってしまった。最終コメントでネタバレを見てしまって解けた。でもこれは直前の「チェスの駒を置いたときだけ通れる床」のパズルのバリエーションだから、ちゃんと考えれば思いつけたはずだと、非常に心残りがある。

最後の博士からのありがたい言葉は、たしかにその通りだよなと思う一方、なんか知らない間に自己啓発セミナーに迷い込んでしまったような感じもしていた。「どれだけ間違っていると言われても、予期していない道を進んでいると言われても進み続けた」そりゃゲームだからね、現実では……とか言ってるの良くないよね。
ただ、周りからこう言われても貫き通すことで辿り着く終着点という意味では、やっぱり LISA のエンディングの方がしっくりくる感じがある。急にほかのゲームの話だし、悲観的すぎと言われればそうなんだけど、本当に一人で決めて進んでいくなら、最終的に両腕がなくなったうえで巨大な肉のナメクジになっても構わないという覚悟が必要なんじゃないか。そして、その決断を信じるならたとえ最悪な結末を迎えたとしても、それを受け入れなくてはいけない。でも本当にそんなことできるのか、なんかそんなどうでもいいことを考えてしまう。

持ったオブジェクトが視点によって大きさが変化するというのはトレイラーなどを見て知っていたし、このゲームの一番個性的な部分だと思うけど、ゲーム全体としては「視点を変える」というコンセプトでもっと様々なパズルがあって想像よりも楽しかった。
あと、Patrick's Parabox や COCOON もそうだけど、こういう入れ子構造になっている要素があるパズルゲームが好きなのかもしれない。なんか、ちょっと悪いことをしている感じがある。子供のころに合わせ鏡に関する都市伝説を聞いたからかもしれない。合わせ鏡の中心にたって呪文を唱えると死ぬとか別次元に行くみたいな。こういう都市伝説って荒唐無稽だし冷静に考えると意味わかんないけど、身の周りにあるものですぐ再現できる感じが良いのかも。
そういえばこのゲームの遠近法を使ったギミックも、すごく身近というか、現実で当然のように認識しているものをそのまま利用して、奇妙な感覚を生み出す世界を作り出しているから、なんか都市伝説的なものと相性が良いのかもしれない。あまり詳しくないし時系列も良くわかってないけど Liminal Space とか The Backrooms のようなものと、このゲームって関係しているんだっけ?