Tell me why
とてもざっくり言うと、双子の身に起きた過去の事件の真相を追求して、地元の関係者を糾弾し、田舎の閉鎖的なドロドロした関係から若者が抜け出すという話で、景色はキレイだけど、田舎の人間関係の描写には割と容赦がないなと思った。たしかに境遇を鑑みたら双子にその権利はあると思うけど、常に一方的にジャッジする側なのが、結構感覚的に大変だったかもしれない。
都会から家出してきた美人のお嬢様(母親)に対して、地元の男たちが浮足立つという物語の典型みたいなのがあると思うけど、それに対して子供の視点から「いい加減にしろよ」と言っているような感じは面白かった。
それでも、最後はトムの記憶(メリーアンはタイラーを殺すつもりはなかった)を受け入れることで、双子自身も母親のことを勘違いしていたことを認めて、結果的にアリソンが一方的に背負っていた罪の意識を双子で共有することによって絆が深まるのは、一方的に糾弾して終わりになるよりは包括的な解決という感じがして良かった。
タイラーがトムと最初にあったときの微妙なよそよそしさ(突然背を向けて荷物を整理しだしたり)とかは、最終的に実はとんでもない秘密を抱えていたせいだとわかるんだけど、この時点ではタイラーの見た目の変化が受け入れられないせいなのかと自分は思っていて、プレイヤーの偏見を利用したようなトリックになっているのはなんかすごいなと思った。直前のサムとのやり取りで、性自認に対する田舎のおっさんのいかにもな偏見が出てきたこともあり、周到に準備されたトリックのようにも見える。
他にも伏線というか、後の展開に対する示唆的なセリフや演出は(たぶん)色々あるんだけど、これが一番まんまと嵌ってしまった。
自分も田舎の出身だけど、色々あって近所づきあいがゼロだったから、家族や学校の教師以外の年長者というのがどういう感じなのかを正直知らない。だから、このゲームに出てくる人々の描写がリアルなのかはわからないんだけど、なんとなくそれっぽい感じはした。したんだけど、選択進行型のゲームの性質か、「あ、今ルートが合流したな」みたいな、急に態度が変わるような瞬間でちょっとウケてしまった。「いきなり落ち着くな!」のコラ画像みたいで。とくに、アリソンが署長に真実を告げたときや、テッサを糾弾した後それでも許すと決めたときなどの深刻な場面で、急に興奮状態から通常の心拍数に戻るような瞬間があり、ちょっと嘘くさく見える時もあった。そういう本当に細かいことまで気になってしまうくらい普段の演出がリアルなことの裏返しだとも思う。
- 「父、帰る」も兄弟で共謀して親を殺す(事故だったっけ?)話だけど、そういう話が好きなのかもしれない。あれも寒い地方の話だったし。ところで同性じゃない場合に「きょうだい」を漢字で書く方法がないのってちょっと不便すぎじゃない?自分が知らないだけで、本当はちゃんとした言葉があるのかも。
- 最後のメリーアンの部屋の謎解きはどうしても「ゲームだな~」という感じがしてしまった。謎解きをしながら母親の真実に迫っていくのは面白くもあるけど、急にゲームっぽくなったせいで、ちょっと緊張の糸が切れるような感じがある。実際は母親の部屋のドアのパズルがあったりと、子供時代に母親とこういう遊びをしていたのかもしれないから、設定上それほど突拍子がなくはないとしても、ゲーム中に出てくる母親との記憶はしんどいものばかりだから、なんか急だなとおもってしまった。
- アラスカの景色が良すぎて、こんなところに住んでたら本当に働く意味とかわけわかんなくなりそうだけど、こういうのも田舎に対する偏見なのか。
- Steam の説明ページに「リアルなキャラクター、成熟したテーマ、興味を惹く選択肢に溢れたゲームです。」って書かれてて、商品としてそういうのを売りにしていることに、なんかそうなんだと思ってしまった。