Windy Meadow - A Roadwarden Tale
あんまりこういうハードなファンタジー世界を舞台にした物語を読んだことはなかったけど(それこそ Roadwarden くらい)、これはすごくおもしろかった。顔グラがちょっと素朴すぎる気はするけど、そこは自分も人のこと言えないから。
二人目(Fabel) のストーリーが始まり人物紹介などもすべて別の視点で描かれることで、Windy Meadow の住民たちのちょっと苦しくなるくらいリアルな二面性がだいぶあっさりと語られて、同僚の影口を偶然聞いちゃったみたいな、嫌なんだけど後ろ暗い面白さのようなものがある。Vena のストーリーでは独善的な父に人生の重要な選択を勝手に決められたように感じて街への移住を躊躇している様子が Vena 自身によって語られていたけど、Fabel からすると Vena はあまりにも自分に正直に栄光と名誉の道へ邁進しているようにしか見えない。ほかにも、姉を慕い健気な Vena の妹も、Fabel にとっては足の障害をバカにされた言動から苦手意識を持っていたり、嫌味な姉は母親思いで痛快なユーモアセンスを持った人間として見えていたりする。
こういうギャップってやろうと思えばもっとショッキングに描くこともできそうなものだけど、人物名にマウスオーバーしたときに現れる注釈といった奥ゆかしい表現だけで書かれていることもしばしばあり、これが皮肉めいた諦観のようでもあり、こうした人間関係は何も特別なことではないとする寛大さのようでもある。これは Windy Meadow の自然の厳しさと懐の深さにも通じ合う気がして、この物語全体が自然と暮らす田舎の現実的な思想を表現しているのかもしれない。
最後、Fabel が高名な吟遊詩人となる夢を断念する際の静かさからも、実際に人がなにかをあきらめるというのはあくまで内省の結果であり、それは平穏な時間からしか生まれないのかもしれないなと思った。Fabel 以外の二人(Vena と Ludicia)は割と劇的な展開や明確に克服すべき課題が現れるのと対比されて、Fabel の物語が特に静かで印象的だった。
- Nelia が誠実さと功名心が部分的に対立するということを熱心に語る場面は、なんか作者の葛藤みたいなものが反映されてたりするのかなと勝手に思ってしまった。ゼロから有名になるためには、見た目の良い踊り子や演奏などなんでもいいから人目を引く必要がある、というようなことをすごく詳細に熱く語るから。このゲームもそういう現実性とエンターテインメントの葛藤の上で生まれた物語のような気がする(まあ、大抵の創作はそうかもしれないけど)